「特定技能」と「技能実習」は何が違う?雇用側が気をつけるべきこと

外国人を雇用したい企業にとって、「技能実習」と「特定技能」という在留資格は非常に身近な制度です。しかし、この2つには制度の目的・対象者・雇用条件など、さまざまな違いがあり、適切に理解しないまま受け入れてしまうと、法令違反やトラブルにつながる可能性もあります

この記事では、雇用主側が知っておくべき「技能実習」と「特定技能」の違いと、実際に外国人を受け入れる際に注意すべきポイントを解説します。


■ 制度の目的が根本的に違う

項目技能実習特定技能
制度の目的国際貢献(技術移転)労働力確保(人手不足対策)
在留資格技能実習1号~3号特定技能1号・2号
対象者発展途上国の若者一定の技能を持った外国人
受け入れ機関監理団体(協同組合など)経由企業が直接受け入れ可

技能実習制度は「外国人に日本の技能を習得してもらい、母国で活かしてもらう」ことが目的で、あくまで“研修”という位置づけです。
一方、特定技能制度は「人手不足を補うための即戦力として働いてもらう」ことが前提で、“労働力としての受け入れ”が合法的に認められているのが大きな特徴です。


■ 受け入れられる業種・職種の違い

  • 技能実習:現在85職種・156作業(例:縫製、建設、農業、介護 など)
  • 特定技能:12分野(介護、ビルクリーニング、外食業、農業、建設など)

特定技能の方が、業種ごとの試験制度や基準が整備されており、「就労のための在留資格」として制度設計されています。


■ 日本語能力・試験の要否

  • 技能実習:試験なしでも受け入れ可能(ただしN4程度の日本語力が目安)
  • 特定技能:原則として技能試験+日本語試験(介護・外食などは例外あり)

特定技能の場合、各分野ごとに用意された技能評価試験に合格する必要があるため、基礎的な実務能力を持つ外国人材が多いのも特徴です。


■ 雇用形態と企業側の責任の違い

項目技能実習特定技能
雇用契約実習計画に基づく実習労働契約に基づく雇用
受け入れ方法監理団体を通じて間接企業が直接雇用
支援の義務監理団体が支援企業または支援機関が支援義務
転職の可否原則不可同業種内で条件付きで可能

特定技能では、受け入れ企業に「生活支援義務」が課せられており、住居の確保、生活オリエンテーション、日本語学習支援などを企業自身または登録支援機関が行う必要があります。


■ 滞在期間の上限と将来のキャリアパス

  • 技能実習:最大5年(1号〜3号まで)
  • 特定技能1号:最大5年(2号に移行可能)
  • 特定技能2号:在留期間に上限なし/家族帯同も可能

特定技能2号(現在は建設・造船の2分野のみ)に移行すれば、永住や家族帯同も視野に入れた長期雇用が可能です。
一方、技能実習では、基本的に「技能を習得したら母国に帰国すること」が前提です。


■ 雇用側が気をつけるべきこと

① 制度の違いを理解したうえで受け入れる

制度の目的や運用ルールを混同したまま受け入れてしまうと、「実習生に過度な労働を強いる」「支援義務を怠る」などの違法状態に陥りかねません。
とくに特定技能は労働者としての権利が明確に保護されているため、雇用契約・労働時間・賃金などに細心の注意が必要です。

② 登録支援機関との連携をしっかり行う

特定技能を受け入れる場合、企業が登録支援機関に業務を委託することが一般的です。支援内容(生活・労務・通訳対応など)を明確にし、支援計画が適切に履行されているかチェックしましょう。

③ コンプライアンス体制の整備

外国人労働者を受け入れる企業は、社内の就業規則、労働契約、社内説明資料を外国語でも用意しておくと安心です。また、定期的に行政書士など専門家と相談しながら運用を見直すことも推奨されます。


■ まとめ:制度の違いを理解して、適切な受け入れを

「技能実習」と「特定技能」は、似ているようでまったく目的が異なる制度です。
企業側がどの制度を利用して人材を受け入れるかによって、責任や義務も変わってきます。

今後、外国人労働者の需要はますます高まる中で、制度に対する理解を深め、適切かつ持続可能な雇用環境を整備することが企業の信頼にもつながります

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この記事を書いた人

岐阜県行政書士会に所属の行政書士です!
資格予備校で公務員講座専任講師も行っております。 
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